グラデーションとカットガラスの衝撃。今こそ語りたい「キングセイコー・VANAC」という挑戦

「キングセイコー(KS)」にどんなイメージを持っていますか?
おそらく、多くの時計ファンは「グランドセイコーに並ぶ、真面目で、高精度で、
無駄を削ぎ落とした日本の美」を想像するのではないでしょうか。

しかし、そんな優等生なキングセイコーが、1970年代の日本が最も
エネルギッシュだった時代に、突如として放った“異端児”が存在します。

それこそが、今回ご紹介する「キングセイコー・バナック(KS VANAC)」です。

高級機が魅せた「70年代の狂気と前衛デザイン」

VANACが登場したのは1972年のこと。高度経済成長期の熱気の中、当時のファッションが
サイケデリックでカラフルになっていく時代に、
セイコーが「若者のための高級ドレスウォッチ」として開発しました。

当時の広告キャッチコピーは「VANACはカラーダイアル」。

その言葉通り、VANACのデザインは今見ても衝撃的です。

魅惑のグラデーション文字盤: グリーン、ブルー、ブラウンなど、
光の角度で表情をガラリと変えるメタリックな文字盤。
多面カットガラス: 風防には3面、9面といった大胆なカットハードレックスガラスが採用され、
光をキラキラと反射します。
エッジの効いたケース: トノー(樽型)や、流れるような独特な一体型ブレスレットの造形。

お堅いイメージのキングセイコーが、ここまで遊んだ。
このギャップこそが、現代のコレクターを惹きつけてやまない理由です。

「ハイビート」を搭載した本気のスペック

見た目の派手さに目が行きがちですが、そこは「キングセイコー」。
中身は一切妥協していません。

心臓部には、当時のセイコーの技術の結晶である56系(諏訪精工舎製)や、
後に最高傑作とも称される52系(亀戸・第二精工舎製)の
ハイビート(毎時28,800振動)自動巻きムーブメントが搭載されています。

秒針を止めるハック機能はもちろん、日付け・曜日のクイックチェンジ
(※ヴィンテージの56系はプラ製ギヤの破損に注意が必要ですが!)など、当時の
実用時計としての最高峰の機能がこのアヴァンギャルドなケースに詰め込まれていたのです。

今回の限定モデル「MKF004J」とは?

ところで、VANACのコレクターたちの間で、ささやかれる「MKF004J」はご存知でしょうか。

一般的なヴィンテージ・バナックのリファレンスは「5626-7140」や「5256-5000」といった
形式ですが、「MKF004J」というコードは、セイコーの公式カタログには滅多に登場しません。

一説には、「当時の海外輸出向けの管理型番(Jは日本製を示すJapanモデルの意)」であったり、
「特定の国でのみ流通した限定的なモデルのコード」、
あるいは「当時の販売店用カタログの注文コード」ではないかと言われています。

現行品にはない「パワー」を腕元に

現在の時計界は「ラグジュアリースポーツ」や「シンプルモダン」が主流ですが、
キングセイコー・VANACが放つような「強烈な個性」と「時代のエネルギー」を感じる時計は、
今の現行品からはなかなか生まれません。

グリーンのグラデーション文字盤に、光を弾く9面カットガラス。
袖口からチラリと覗くその姿は、どんな現行の高級時計よりも持ち主の「こだわり」として
現れます。

コメント

タイトルとURLをコピーしました